役目を終えた家

実家の最寄り駅に降り立つ。

最寄りとは言え、距離は4〜5 kmある。

でも最寄りは最寄りなのだ。

いたいた、暇そうなタクシーが1台。

荷物もそこそこあるし、乗ろうと窓をノックする。

喜んで乗せてくれるかと思いきや、運転手さんはかぶりを振って窓も開けず断ってきた。

ちょうど予約でもあったのか。

どうしようかと迷っている僕を尻目に、タクシーは勢いよく去っていった。

田舎の駅に2台目のタクシーはいない。

代わりに会社からもう1台呼んでくれるでもなく、ポツンと取り残された僕。

超感じ悪い。

なんか、電話してもう1台呼ぶ気にもなれない。

よし、歩こう。

キャリーをゴロゴロ引きながら歩き出す。

踏切を越えると走り出す。

集落を出て、田んぼ道。

大げさに僕を避けていく対向車。

さすがに荷物ありだとちと遠いなと思いながら、40分くらいで着いた。

実家の隣の家、幼い頃は僕より一つ年上の男子と三つ上の女子が住んでいて。

その両親、祖父母がいたから6人が住んでいたわけで。

今はそこに当時の父が一人だけ。

おじいちゃんとなって、一人住んでいる。

一人で住むにはあまりにも広い家。

役目を終えた家。

思い込みからだろうか。

家から生気を感じない。

隣の僕の実家。

まだ二人住んでいる。

でも、同じようなものだ。

僕の実家には、もう少しだけ役目が残っている。