そこに付箋を貼っておいてほしい

降り立つ故郷。

工事が終わった富山駅は超カッコ良かった。

駅の建屋内に路面電車が入ってくる、という斬新な風景。

出張で全国津々浦々いろんな駅を見てきたけど、こんな駅は見たことない。

 

在来線に乗り換えて、実家最寄り駅へ。

最寄り、と言っても歩いていくにはちと遠い。

ラッキー、1台いた。

シートを倒し、暇そうにしていたタクシーの運ちゃんを起こす。

父は仕事で母はもう車の運転ができない。

年々頼れなくなっていく、両親。

出迎えてくれた母はいつも愚痴をこぼす。

いつものこと。

父の姉がかっさらっていったばあちゃんの話。

この前父に電話がかかってきたという。

 

どこかの部屋に仕舞ってあったはずの冊子。

そこに、ばあちゃんの名前が記載されているページがあって。

そこに付箋を貼っておいてほしい。

そう言ったばあちゃんに父が理由を問うと、「将来誰かが見た時に『ああ、こういうと人がいたんだ』ってわかるように」だそうで。

そんなもん、誰が見るがか。

この家はもうこれで終わりかもしれないのに。

超冷たい返しなので、これだけ読むと父は冷徹な人っぽいけど、かなり温厚な人で。

その人でもこの返しになっちゃうのが、このばあちゃんで。

ばあちゃんはなんやかんや結構精神的に強いので、きっと全くこたえてないはずで。

 

人間て、自分のこと忘れてほしくないんだ。

生きた証を残したいんだ。

生きた意味があったと、思いたいんだ。