辛うじて朝4時に立ち上がる。
ソファーの座る部分を取り外し、床に置く。
部屋の灯りを消し、胡坐をかいて眼を閉じる。
1時間にセットしたタイマーがカウントダウンを始める。
今日から新しい生活。
朝、夕に1時間ずつのヴィパッサナー瞑想。
できるだろうか、僕に。
そもそもがずーっと仕事でパンクし続けていた僕にできるだろうか?
首から上の感覚に集中する。
脈打つ感覚を感じたら、首へ。
首の大きな脈を検知する。
ドクッ、ドクッ、ドクッ、ブチっ!!! トロン・・・。
バンガーへ入った。
まずは一歩、踏み出せた。
大丈夫、まだ抜けていない。
眠気とともに1時間の瞑想はスタートした。
京都ダンマバーヌから生還したのは昨日。
トンボ帰りで今日は神戸へ出張。
普通に考えたらそのまま神戸行けよって話なんだけど、昨日は一旦自宅に帰ってきて良かった。
まあ、その話はまた落ち着いてから。
娑婆の世界は厳しく、容赦ない。
なんせ、瞑想合宿10日間コース明けで休む間も無く、今日から出張なのである。
現場へ着いて、さあお客さんへ挨拶だ。
と思いきや、早速捕まる。
ええと、現地の人にね。
矢継ぎ早に捲し立てられる不具合の数々。
これは、あれだな、このタイミングを狙って完全に僕を待ち構えていたな・・・。
お客さんへ挨拶する時間が迫る中、降りしきるクレームに防戦一方。
刻々と時間が過ぎる。
ここで、僕は違和感を覚えた。
あれ、こんなに切羽詰まっていて、でも今、僕は焦っていない?
どうやら現地の人は鬱憤を晴らし切ったようだ、一旦ね。
それにしても。
今まではこの状況だと完全に「ギャーッ!!!どうしよう・・・」と、強烈なストレス、精神的な圧迫感を感じていた。
それが、どうだろう。
多少の動揺はあるけれど、いたって平静。
言われていることに対して、かなり客観的に受け止めている気がした。
これは、完全にヴィパッサナー効果だ。
お客さんへの挨拶を終え、さあこれから作業。
但し、さっきのクレームで完全に予定が狂っている。
上司へ電話、作戦会議。
ここで、また違和感。
この状況で、僕はめちゃくちゃゆっくり丁寧に落ち着いて喋っている。
上司とのやりとりは至極スムーズに進んだ。
昨晩の睡眠時間2〜3時間にも関わらず、思考が強烈にスッキリしている。
その後も予定外作業を淡々とこなした。
ただ、淡々と、平静に。
すごい、これは、すごい。
これがヴィパッサナー。
行って、良かった。
合宿明け初日から、僕はその効果が存分に発揮されていることを実感した。