Day2 炙り出せれた憎悪

ゴォーン・・・ゴォーン・・・

真っ暗な森の中に静かに響く鐘の音。

それは早朝4時の僕の鼓膜にバッチリ届いた。

よっしゃ、起きれた!

枕元の懐中電灯をポチッと押して、体を起こす。

ここで、体の異変に気づく。

 

背中が、僕の背中には経験したことのない激烈な筋肉痛がある・・・。

 

そうか、胡座かいて延々と座り続けるって、背中のこの筋肉で頑張っていたんだね。

ぎこちない動きで服を纏い、出来るだけ音を立てないようにそっと部屋を出る。

同室の二人はまだ起きていないようだ。

洗面所でトイレやら髭剃りやらを済ませ、いざ朝一発目の瞑想へ。

僕の席は一番後ろの端っこ。

入口の様子、全体の様子がよく見える。

来るわ来るわ、昨日のメンバー。

僕も含め、普段は朝4時になど絶対に起きないであろう人たちが、鐘3つによってゾロゾロと会場に揃っていく。

いやあ、やればできるものですね、と謎の感心に浸る。

 

4時半から始まった瞑想は昨日のそれとは一味違う。

まず、背中が痛い。

それはまだいいのだが、その前に激烈に眠い。

そのうち足に激痛が走るようになり、それでいい感じに目が覚めるかっていうと、そんなこともなくて、朦朧とした意識の中、ごく稀にハッとして呼吸を観察しなきゃ!ってなって、足の痛みに悶絶して、すぐにまた意識が飛んじゃって・・・そんな繰り返しでラストのゴエンカ氏の独唱と救いの鐘に目が覚めた。

 

鐘は6時半の朝食を告げるもの。

でも、今日の僕は違う。

皆の流れから外れ、シャワールームへ。

一人シャワーと脱いですぐの服を手洗いで洗濯し、干場にかける。

そうやって30分近くを過ごし、朝食会場へ。

時間をズラしたおかげで、バッチリ空いてる。

空いてるってのは、パンのトースターとかも含めてね。

7時15分には世話係りの方たちによる朝食会場の片付けが始まるから、結構ギリギリ。

でも、なんとかそれまでに収まりそう。

おしっ、朝のルーティーンはこれで確立じゃ!

こうやって、他の人と時間をズラすだけで、かなりのストレス低減になる。

 

さあ、8時までの残り時間を散歩じゃ、散歩!

そうしたいところなのだが、残念なことに外は雨。

無念、部屋に帰ってうつ伏せに倒れる。

眠ってしまわぬよう、微妙に緊張感を保ちつつ、休む。

同部屋の二人も突っ伏していた。

 

8時からまた瞑想。

昨日の質問回答、頭の中で言葉を唱えてはいけないってテーマで取り組むんだけど、これが意外と超難関。

どうしても頭の中には実況の言葉やら、いつかの記憶の言葉やら、将来の妄想の言葉やらが並んで来る。

そのうち足に激痛が走り、もう呼吸どころではない。

ゴォーン・・・ゴォーン・・・

ああ、助かった!

なんてありがたい、救いの鐘!

いや、いかん、いかん。

僕は遊びに来たんじゃない、修行に来てんだ。

 

5分の休憩後、救いではない鐘が鳴って、また瞑想は始まる。

同じ音なのに、不思議である。

終わりは救いで、始まりは何というか、覚悟の音。

とにかく、足の痛みをなんとかしなきゃ!

僕は利き足の自然な足の組み方の逆をやってみた。

これは、少し勇気がいる。

途中で利き足の組み方よりもっと痛くなるような気がしたからだ。

結果から言うと、何も変わらなかった。

どっちのパターンで足を組んで座っても、同じくらい痛い。

チーン。

 

昼食は今日もおいしかった。

たしか、トマトパスタと、まだあったと思うんだけど、忘れた!

昨日に引き続き、肉なしのベジタリアン食。

だけど、全く気にならない。

すごく食べ応えがある味というか。

なんか、肉なしでも全然暮らせるんだなって、そんな発見。

 

雨は止まなかった。

昼食後はベッドに突っ伏し、13時からまた瞑想。

あれや、これやと微妙な足の配置変えで痛みが低減しないかトライするも、すべて撃沈。

とにかく痛い!

相変わらず瞑想の中盤以降は痛みとの戦いとなり、救いの鐘に安堵するだけの状態。

いかん、これはいかん気がする。

かといって解決策が浮かばない。

 

休憩後の瞑想。

さて、ここで心境に異変が。

足の激痛の中、近所のとある小学生への憎悪が浮かんできたのだ。

なに、大人気ないって?そうなんです、大人気ないんです。

その子が遊びに来ると、とにかく家が荒れる。

一度怒鳴ったことがあるんだけど、それでもめげない。

とにかく毎日のように来ては息子と喧嘩して、家は荒れて帰っていく。

それがものすごいストレスになっていて、という話なんだけど、今関係ないじゃん。

ないんだけど、モリモリその子が頭の中を占めていく。

憎い、憎い、憎い!!!

痛みとともに、その子への憎悪が増幅する。

そうやって終わったそのターン。

次のターンも同じだった。

足の激痛、憎しみの爆発。

ゴォーン・・・ゴォーン・・・

似てる、痛みと憎悪は似てる。

ハァ、ハァ・・・

17時の鐘が鳴った時、少し息が切れていた。

 

ティータイム、休憩を挟んで最後の瞑想。

背中と足の痛みになんとか耐え切って、今日も講和まで辿り着いた。

今日もありがたい話が続く。

印象に残っているのは、髪の毛の話。

美しい女性の美しい髪。

それが運ばれてきた夕飯の中に入っていたらどうだろう?

汚い、と皆が思う。

同じ髪なのに、纏まっているとキレイだけど、本体から外れた途端に汚物になる。

たしかに不思議な現象だ。

でもその通りでもある。

肌や爪なんかも同じだよ、その話がとても印象的だった。

要は、髪や肌や爪に執着するなんて、無駄でしかないよってことなんだけど。

言われてみりゃそうなんだけど、でも、キレイな女性の髪を見たら美しいなって思っちゃいそうだし、でも、食事に誰の髪が入っていても嫌だろうし、うーん、どっちもわかる!

 

さて、5分の休憩を挟んで最後の瞑想。

ここで、新たな課題が出た。

上唇と鼻の付け根のトライアングル、そのエリアで呼吸以外の感覚に気付け!というもの。

さて、そんなこと言われてどのエリアで何すればいいのかわかるだろうか?

瞑想後の質問タイム、たまらず今日も僕が先陣を切って先生の前に座る。

 

さっきの新しい課題のエリアってここですか?

 

いや違う、ここだよ。

右手の人差し指で三角形を描いてくれて、やっとわかった。

鼻の付け根というのは両目の間のところで、確かにそれは付け根だわな。

上唇の上ってのは解釈通り。

聞いといてよかった・・・。

今日もヘトヘトでベッドインなんだけど、なぜだか今日もすぐには寝付けなかった。