手術、失敗

執刀医からのわかりやすい説明が続いていた。

病院のカンファレンスルーム。

朝から始まった手術が終わったのは、完全に陽が落ちた後だった。

説明の途中、部屋の空気が一気に冷える。

 

申し訳ないが、神経を切ってしまった。

復旧しようと試みたが、ダメだった。

事前の検査では、把握できないことだった。

 

カラフルな脳の3D画像を前に、立ち尽くす。

進化した医療。

MRICTスキャン

いくら事前に脳内の状態を知ることができたとしても、実際に開けて、見てみないとわからないことがある。

やってみないとわからないことがある。

分野は違えど、技術職に身をおく自分。

言いたいことは、痛いほど理解できた。

「もうでる〜」

4歳児には、キツいわな。

話の途中で坊ちゃんを抱え、僕は出来るだけ静かに廊下に出た。

 

10分後、母と面会できた。

子供、NG。

父と叔父さんが先に面会。

集中治療室から出てきた叔父さんの目が潤んでいた。

叔父さんが子守を代わってくれ、僕も中に入る。

痛々しく、感じてしまった。

「失敗」という現実が、目の前にあった。

おそらく、命に別状なないのだろう。

ただし、障害が残る。

長居しても、無力なだけだった。

部屋を出て、廊下の天井を見上げる。

現実が、こぼれてしまわないように。

受け止められるように。

まずは、認めることから。

そこから、スタート。

はじまりの日。