名物

人力車、というものに初めて乗った。

ビビるね、あれって普通に自動車の免許みてえのが必要で、国道も走っちゃうんだね。

旅行先で見かけたことはあって、でも乗ったことがなかった。

乗るハードル、イコール値段。

それなりの値段を出す理由がなくて、今までは躊躇してた。

それを超えたのが、今回の旅行のコンセプトの一つ「ケチらない」。

安さを求めることなく、フェリーの特別席券があれば買い、新幹線はグリーン車までは買わないけど、自由席でも行けるところを全て指定席で買い、宿はちょっと高いなと思うくらいの贅沢なところを選んだ。

要は、迷ったら高い方を選択する、という話。

それが功を奏して?よし、乗ろうってなった。

これがね、意外と良かったの。

初めてくる温泉街、どこ行ったらいいかわからない。

そして、工程的に時間に余裕はあまりない。

坂もキツいし、道をミスるとダメージもでかい。

それをわかってる人が解説しながらデーンと案内してくれるわけで。

いやあ、人力車いいですわ。

その箱根温泉解説の中で、「箱根に名物はない」ってのが面白くて。

山の急斜面だから作物が育たない、だから名物がないんだって。

そんで、それが悪いことかっていうと、そうでもなくって、料理人は「名物」に縛られずに自分の好きなものを使って腕を振るえる。

だから、箱根では好きなものを食べた方がいいよって。

確かに、名物があるとそれを無理やりにでもメニューに入れなきゃ、食べなきゃってなっちゃうもんね。

それって本当にしたいことなの?って、料理出す側も、食べる側も。

これ作らなきゃ、これ食べなきゃって、一種の強迫観念のようなさ。

いやあ、だからさ、物事に良い悪いはないんだなって、改めて。

名物がないならないで、それは良いことでもあるんだなって。

だから、なんかあった時って、「良い」「悪い」をどっちに取ることもできる。

せっかくなら「良い」を取り続けた方が良いんだけど。

なかなか全部「良い」って選べないんだよなぁ。