近所に夏場だけ営業している無人島がある。
船着き場から約10分、気軽な別世界。
ずっと気になっていて、初めて行ってきた。
日焼けしたおっちゃんたちが運営する海の家がズラリとならび、その前に濁った海水浴場が広がる。
誰も登っていない監視台の根元を見ると、腐食したのかボロボロになっている。
微妙な海で過ごす微妙な時間はとても良かった。
帰りに海の家でソフトクリームを食べようとすると、セルフサービスだという。
ソフトクリームマシンにセットされたスジャータのソフトクリームのケース。
いくらボタンを押してもクリームが出てこない。
マシンの赤ランプ点灯箇所を見ると、「ソフトクリームが固すぎて出ません」と書いてあった。
まっちゃっちゃに日焼けしたおっちゃんは悪びれることもなく、マシンでのソフトクリームを諦め、ソフトクリームの素であるカップを皿に載せて僕らに渡し、これで食べてくれと言う。
席について食べながらおっちゃんを見ていると、ひたすらビールを飲むかたばこを吸うかしていた。
よく見ると、腹もそこそこビールっ腹だ。
ソフトクリームを素のままスプーンで食べるとこんなに残念なものなのかと思いつつ、食べ終えて帰路に就こうとする時、マシンにセットされた固すぎるソフトクリームの素はまだそのままだった。
あのソフトクリームの素は完全に溶解するまで放置されてしまったのだろうか。
酔っぱらったまっちゃっちゃのおっちゃんにとってはどうでも良いことなのだろう。
なんというか、僕にはそのおっちゃんがとても豊かに見えた。