おっさん、奥さんに服を買う

定時で事務所を出て、今日は寄り道。

明日は奥さんの誕生日だ。

他人に服を選んでもらいたい。

誕生日プレゼントは服がいい。

という宿題。

いざ、服屋さんの女性コーナーへ。

いや、これがね、なかなかハードルが高い。

平日のごはんどきだから、空いてはいるけれど、いや、だからこそそのキャピキャピした空間に30も後半に差し掛かった見窄らしいおっさんが服を眺めて一人ヨタヨタ歩き回るなど、異様な光景なのである。

思い切って、目が合った暇そうな女性店員に話しかける。

顔を引きつらせながら奥さんの「ジャンル」を聞いてきたその店員さんに、僕はまともに答えることができなかった。

他の女性客の相手をし始めたところで、退店。

もうこれ以上世の女性店員さんを困らせることはやめよう。

「あまり話しかけて欲しくないよ」オーラを身に纏いながら、僕はなるべく長時間立ち止まらないようにしつつ、店から店へと渡り歩いた。

ジャンル。

そうか、まず、何を買うかのジャンルを絞らねば!

そして、上着と下のズボンやらスカートやら、そういうコーディネートを考慮して買うなど、到底できぬ!

1着で完結、そう、ワンピース、それだ!

そうやって狙いを絞った結果、これなどいかがか?というのが2着見つかった。

こっちかな?そっちかな?

2店舗をウロウロする怪しいおっさん、その不審さも限界に達しようかという頃合いで、僕は決断した。

こっちだ!

確か、昔こんな色の服着よったわ!

近くの店員さんに恐る恐る声をかけ、サイズやら何やら最後の相談をして、購入。

ニコニコ対応してくれた店員さんに感謝。

服を選ぶ上での注意点など、いろいろ説明してくれた。

なぜ、この店員さんは顔が引きつらないのか?

なんとなくだけど、それは働いてる理由というか、動機というか、そこなんじゃなかろうか。

なんかね、伝わってくるの。

この人、服、好きなんだろうなって。

なんか、いいなって。

この場を借りて、ありがとう、名前知らないけど、あの時の店員さん。