蚊と息子

浅い眠りの中、右手中指に生温くて不快な感触。

それ以上感触を感じないように、そっと起き上がり、水道水で指を洗い流す。

蚊を潰してしまっていた。

眠りを妨げられた不快感と、無意識とはいえ、蚊を殺生してしまった後味の悪さが混ざってテンションが下がる。

少し落ち着いた後、僕はなぜか夕食時にメシを掻っ込む息子の姿が頭に浮かんだ。

命懸けで僕の血を吸っていた深夜の蚊と、集中して目の前のメシをかっ食らう息子の姿が、妙に重なった。

食事とは、本来、夢中でかっ食らうものなのかもしれない。