痛ったぁ!!
キッチンから奥さんの声。
スライサで指を切った。
刃物で切った傷、簡単には塞がらない。
昔、よく使ったゴム製の指サックを渡してあげる。
これを装着すれば、傷口が塞がっていなくても調理を続けられる。
今日は夕飯作らんでもいいよ、と声をかける。
「だいじょうぶ?」と心配そうに聞く坊ちゃん。
普通、である。
でも、普通って状況によってはけっこう難しい。
飲食店で働いてた時、ちょこちょこ指を切った。
「だいじょうぶ?」なんて、優しい声はない。
料理に血が入らないように、お客さんに見えないように。
どちらかというと、叱られる一方。
何やってんだ、と。
なんだろうね、その時の心が冷えていく感覚。
ハッキリと覚えている。
逆の立場だったら、僕はできただろうか?
心が冷えない対応を。