歴史への造詣が深い大ベテランは語る

どうにもならないことはどうにもならない。

現場ではそれを痛感する。

糞尿にまみれながら、見えないし手の届かない場所の「絡みついたしさ」を草刈り鎌で掻き出す。

まあ、なんというか。

そいつが悪さしてるって話。

 

翌日、事務所で「見えないし手の届かない」ことを盾に、点検口あった方がいいんじゃないの?と訴える。

歴史への造詣が深い大ベテランは答える。

 

昔は点検口付いてたんだよ、でもある日「これ使ったことあんの?」って聞いたら『ない』って言うからコストダウンで無くしたの。

 

コストダウン。

これは細かい話の積み重ね。

先人たちの努力。

それでいくら下げれるの?って言い出したらコストダウンできない。

そんなに変わらないって言い出したら、できないの。

ただね、そういう細かいコストダウンして、果たしていいことあったかいね?

結局、ただのスペックダウンになっていないかい?

将来への仕事の先送りしてるだけじゃないのかい?

そのアフターフォローが大変で、でも今の仕事もやんなきゃいけなくって、さらに将来の食い扶持が一番大事で・・・。

 

過去、現在、未来。

人間って、そりゃ忙しいわ。

現在だけでも大変なのに。

コストダウンはやめてさ、せめて「過去」を無くしちゃえば?

過去も含めて、トータルでのコストはどうだったのよ?

それやってる人、いないんじゃないの?

案外、そっちの方がコストダウンなんじゃないの?

そうだったとしたら、皮肉な話だね。

 

建築の世界だと、最新の建築物よりもめっちゃくちゃ古い建物の方が頑丈だったりするんだって。

100年前の建物とか。

国会議事堂とか、いつの建物だよって感じするもんね。

でも、地震起きてもビクともしてないよね。

気のせい?

昔は強度計算の方法がわかんないから、過剰設計になってる。

それが今じゃ、計算できちゃう。

自然、技術者は「限界設計」を目指す。

コストを下げるために。

それは「今すぐかかるコスト」だよ。

だんだん、今を凌ぐのに精一杯になっちゃってる。

難しいね、生きるのは。