ココニッシンデスカ?

「次は、日進、日進です。」

 

いつもと変わらぬ、録音の車内アナウンスが流れる。

今日も疲れました。

勤務先から電車で最寄駅に到着。

左側のドアに近づくと、スッと若い女性が割り込んできた。

ドアの真ん前に陣取る、ジャージ姿。

髪はゴムで後ろに束ねている。

 

プシューッ!

圧力空気が抜ける音がして、扉が開くが、前のジャージ女が動かない。

変なの。

左から避けてホームに降り立つ。

毎日1階から17階の事務所まで、階段で2往復しているから、足がパンパン。

鉛のように重たい足で3歩くらい歩き、後方から声が聞こえた。

 

ココニッシンデスカ??

 

振り返ると、さっきのジャージ女がドア上の路線図と睨めっこしている。

隣の人に聞いたのかもしれないが、イヤホンをしていて、聞こえていないようだ。

 

ここ、日進だよ!!

 

僕は、思わず足を止め、ホームの床を指差して言った。

目が合った、ジャージの女。

全く表情を変えないまま、僕に向かって手を振った。

「バイバイ」という意味らしい。

いや、「キモいからこっち見るんじゃねえ」かもしれない。

ドアは閉まり、電車は米野木駅へ走り出した。

 

僕は、妙な独り言を呟きながら、帰路に着いた。