最後の色

〇〇さん、木曜日空いてますか?

行けますよ!と返すと、下水処理場への誘い。

断りません、仕事ですもの!

 

この季節、作業するのにちょうどいい。

寒くもなく、暑くもなく。

暑いと、最悪。

ただでさえ、糞尿である程度ホッカホカなのに、会場は地獄絵図と化す。

今の時期、汚泥からほんのり立ち昇る湯気がそんなに気にならない。

そりゃそうだよね、俺らから出てんだもんねー、くらいで済む。

 

機械と格闘、5時間。

目的を達した後は、なんとなくの「機械いたわり」をする。

ほら、車を車検に出すと、なんとなく車内掃除してくれてるでしょ?

あれです、あれ。

機械に絡まった「しさ」を取り除いたりする。

わかりますか?しさって。

髪の毛など、下水処理ごときでは簡単に分解しきれない奴らです。

髪の毛って、簡単に抜けるけど、抜けた後は丈夫いね(笑)

 

汚泥って、入ってくる下水の種類にもよるけど、基本は「黒」。

「しさ」をドカシながら思う。

この汚泥も、元々はマックだったり、モスバーガーだったり、ミスドだったり。

はたまた、どっかのレストランに綺麗に盛り付けられた、美味しい料理だったり。

例えば、東京の下水汚泥なんて、元々は、それこそ三つ星レストランの料理だって入っているんだろうな・・・。

それが、全部、最後は「黒」。

どんな華やかなものも、最後は黒。

 

一日の終わりも、夜は黒。

人が亡くなれば、黒い服で喪に服す。

カラスだって、真っ黒だ。

黒、それは最後の色。