その家の匂いは、洗濯物に宿る

うぐぐ、腹の調子が悪い・・・。

久しぶりにお昼ご飯を食べたから?

その後にジェラートを食べたから?

神のみぞ知るところだが、トイレが近いことだけは間違いない。

それでも「自宅のトイレでしたい」という謎の本能に従い、電車を耐え、駅から家までを耐え、残り階段1回分。

ピンポーン!と、聞き慣れた音。

予想通り、家の前にはチャイムを鳴らす坊ちゃんの仲間の女の子。

坊ちゃんはいないよという言葉で引き返してくれるほど甘くはなく、じゃあ一緒にスポーツしよう!と僕を誘う。

「うんこ」と言うか「トイレ」と言うか迷った挙句、「トイレ」を選択。

じゃあ待ってるね、と言う女の子には悪いが、トイレに籠る時間は長引く。

壁越しにうっすら「もうかえるね!」という声が聞こえ、その子は去っていった。

 

ある程度スッキリしてから、家の前にドーンと構える公園に向かう。

オタマジャクシの墓を作って埋めきったところ、「みる?」と聞かれ、見ないと即答。

不意に坊ちゃんと同じ匂いがすると言われた。

 

その家の匂いは、洗濯物に宿る。

実家から帰ってくると、奥さんは実家の匂いになっている。

数日経つと、その匂いは消えて無くなる。

思えば、奥さんだって初めは違う匂いがしていた。

いつの間にか、匂いを感じなくなって、同じような匂いに。

 

いつから「家族」になるのか?

それは、婚姻届を提出した日でもなく、結婚式を挙げた日でもなく、もしかしたら同じ匂いになった日なのかもしれない。