無駄なものこそ必要

ブオオオォォオン、ブオオオォォオン・・・

ナイターで戦う競艇場からエンジン音がこだまする。

船が漂う水面は昼間よりも明るいのではないかというくらいの強い光が柵の外まで漏れている。

中の駐車場を覗くと男っぽい車両が犇いている。

不要不急。

自転車を漕ぎながら、不意に4字熟語が頭を過ぎる。

 

選手たちは不要不急な戦いに挑み、それを観戦しに暇を持て余したギャンブラーが押し寄せる。

最近、近所のアコムに入っていく中年男性を見てドキッとした。

あの人は競艇へぶっ込んだのだろうか?それともパチンコだろうか?

僕は予想する。

ギャンブル業界は意外に打撃が少ないのではないか?

人は愚かなもので、「お金に困ったとき」という最も手を出してはいけないタイミングで賭けに出るものであり、確実なコツコツ地道に継続するという選択肢を採用せずに楽して乗り切ろうとして失敗する。

 

さて、昨今不要不急で感染の可能性が高いジャンルが苦しい状況であるが、不要不急でないことが明確だった時代はとうに終わった。

それは、幕末からアメリカに戦争で敗北するまで。

それまでは西洋列強に植民地化されないように、軍事力を・・・という切実なテーマがあり、誰の目にも優先順位No.1が明らかであった。

兵器を製造するために、寺の鐘まで「原材料」になってたんだもんね(笑)

皮肉な話なんだけど、敗戦によって日本には「不要不急でないもの」がなくなってしまった。

今の日本、ほとんどのことが不要不急なんだよ、きっと。

 

無駄なものこそ必要。

民共通の「優先順位No.1」がないからこそ、各々の不要不急の心の拠り所が立ってくる。

世の中の「空気」によって濁ってしまった自分の価値観。

今は、自分の大切なものに気がつくチャンスなのかもしれない。