髪切りついでに寄ろうと決めた。
好きな焼き鳥屋さん。
夕方6時を過ぎているのに「準備中」の札。
躊躇しながらも扉を開けてやってますか?と聞くとキョトンとしながら大将がどうぞ、どうぞとカウンター席に通してくれた。
「準備中になってましたよ」と言ったつもりなのだが、声が小さかったのか伝わっていないようだ。
コロナの影響もあってか、カウンターは僕一人。
テーブルのお客は一席だけでガランとしている。
注文するときは打って変わってハキハキ頼む。
烏龍茶片手に淡々と注文を続ける僕に「よく食べますね」と大将が声をかけてくれる。
ムンクの叫びのように頬に手を添え、「細いのに」と言うので、腹だけ出ちゃって、とお茶目に返すも会話は弾まなかった。
その後も「よく食べますね」と感心されながら、美味しいです、とシンプルに返しつつ、たらふく食べた。
とろけるような牛ホル、全く臭みのないふわふわのレバー、なぜか異様に美味しいオクラ。
大体全部美味しいけど、今日は特にこの三品。
年齢に逆らった大胆なモヒカン頭にタオルを鉢巻で巻き、Tシャツの背中には「串焼きLOVE」の書体が踊る。
料理を出すたびに一品ごと「おっしたーーーー!」とおそらくお待たせしましたを極度に短縮して語尾だけ伸ばした掛け声が店内に響いた。
6千円は超えたかな?という肌感覚でお会計を頼むと5千円を超えたところだった。
酒飲んでないからだな。
妙に納得する。
愛が、魂が入った焼き鳥。
いまここは健在ですな。