いつものカットマン。
何のストレスもなく会話が続いたり、沈黙はそれはそれで気まずくもなかったり。
美容室に求めているのは、ほとんどそれかもしれない。
もちろん、カット自体うまくハゲを目立たなくしてくれるのもありがたい。
最近パーマの勉強をしているのだという話に、僕はムダに食いついた。
ムダが好きなのだ。
「パーマはなぜかかるのか?」の理論について、僕が推察を述べていく。
それはあってる、あってない。
カットマンが僕の思考実験に付き合ってくれる。
「2種類の液を使う」「クルクル巻いた状態で使う」の2つのヒントで、答えに近づく。
ピンときた。
1発目の薬液でまっすぐだった時のつながりを壊し、2発目の液でクルクルした状態でつなげるんだ!
大体、正解。
カットマンは真面目な男。
酸解離定数まで勉強しているという。
あら偶然、私もその言葉知っておりますのよ。
その後、意外な分野で会話が弾み、「界面活性剤とは何か?」といった質問にわかりやすく答えた。
カットマンは僕の知識に驚いていた。
嬉しい話である。
母さん、学校で学んだこと、仕事では役に立ってないけど意外なところで役に立ったよ。
昔学校で死に物狂いで学んだ叩き上げ化学。
全くお金になっていないけど、美容室で役に立った。
胸張って自慢していいのではないだろうか?
学校で勉強した甲斐があったって。
それがお金につながっていなくても。