電車にて

ガクン。

電車が完全に停車し、少しの間をおいて「プシューッ!」と扉が開く。

小さな女性が両脇に杖をついて電車に乗り込む。

この駅で、いつも決まってこの時間。

習慣。

人間とは、なんやかんやで規則正しい生き物なのかもしれない。

 

あっ

 

小さく声を上げ、ホームと電車の間に倒れた。

助けようと2歩近づき、「相手が女性」ということに躊躇。

すぐに立ち上がれそう、・・・で立ち上がれない。

助けがいるのかいらないのか、オロオロしている数秒のうちに、女性は自力で立ち上がった。

ほっ、としていると、女性はケンケンで移動し、車掌室をノックした。

 

すみません、杖を落としてしまって

 

車掌さんが、落ち着いて丁寧に対応する。

別の駅員さんが来て杖を拾い、女性は次の電車に乗るようだ。

結局オロオロしただけだった自分に悲しくなる。

「女性」というだけで、何か気軽に触れてはいけない壁がある。

 

次だ、次、ちゃんとしよう。

同じことがあったら、すぐに荷物をおいて助けに行こう。

触れて「ギャーッ!」って悲鳴を上げられてもいいじゃないか。

想定と心の準備、大事。