治療が病気を作り出す

対人関係が苦手・・・

これが苦手、あれも苦手・・・

迎えに行く度に、保育園の先生から否定的なことばかり言われる・・・

他の子よりもできていないように見える・・・

うちの子は大丈夫なんだろうか?

私の育て方が悪かったのだろうか?

親の悪い部分が遺伝したんじゃなかろうか?

 

そんな子育ての悩みを抱える奥さん(まあ、私の奥さんですね・・・)へ、オススメの本を紹介。

 

 

内向型人間の時代 スーザン・ケイン

 

 

あらやだ、内気な人間が有利な時代が、向こうからやってきてくれるのね!

もう保育園の先生から「内向的な子」と否定されることもなく、逆に外向的な子が保育園の先生から注意される時代になるのね!

意気揚々としてた都会の連中が戦時中に食料に困って田舎の農家に頭下げて食料を分けてもらうのと同じような変化が起こるのね!

 

もちろんそんなことはありません。

本を読まない連中はタイトルで中身を判断し、読まずにその本の中身を否定し、「でも売れてるなら読もうかな」と机の上に積んでおきます。

そして、読む気配がないので腹が立ってそっと持ち帰ると「なんで黙って持ち帰るんだ!読もうと思ってたのに!」と怒るのです。(読まなかったのを自分のせいだと認めたくないのです)

この怒る人がもう一度持ってきてくれ!と粘ることも、自らお金を出して買うこともありません。

ただ「お前は間違っている!」と否定してくるのです。

あぁ、「読みますか?」なんて雰囲気を出さなければよかった・・・。

彼に本を見せてはいけなかった・・・。

 

・・・そんな余計な話は置いておいて。

 

だいたい、日本語版のタイトルなんて直訳されてないはず。

直訳するとニュアンスがズレるし、そもそも言語が違えば著者から伝わる意図は確実に減衰する。

あと、タイトルは「買ってもらえるかどうか」の重要な要素。

そういう意味でも、このタイトルは「外向型肯定社会で生き辛さを感じている内向型人間とその家族たち」をターゲットにしていることがビンビン伝わってくるよ。

さて、じゃあ原題は?

Quiet -The Power of Introverts in a World  That Can't Stop Talking-

まずquietはよく使うフレーズで言うと「be quiet(静かにしておくれ)」がある。

寡黙な、静かなる・・・そんなワード。

次のサブタイトルは関係代名詞。

The Power of Introverts in a World:「ある世界」の内向型人間の力

World  That Can't Stop Talking:「ある世界」とは、話すことを止められない世界

繋げると、話すことを止められない世界での内向型人間の力。

直訳するとよくわかんない。

でも、きっと言いたいことは「外向型(話すことを止めないような)の人が肯定されている世界だけど、内向型の人間の力、ポテンシャルも負けてないんだぜ?」ってことだと思う。

静かだけど、強い主張。

タイトルから感じる印象だ。

 

さて、肝心の中身。

正直、訳本だし読みにくい部分もある。

「グレッグとエミリーは深く愛し合いながらも・・・」って唐突に始まるパターン多し。

いきなりそのイチャイチャしとるやつら誰やねん!?っていうのを気にしてたら完読できない。

でも、例えば5行読んで「あれ?なんか頭に入ってこなかった」ってなったら、もう一回読み返せばいいのさ。

2回目でわからない文章はなかった。

著者が込めたメッセージは、厚い。

本自体、物理的にも薄くない。

加えて、単位ページあたりの密度というか、それがすごく濃い。

著者が7年の歳月をかけて書き上げた大作。

時間はかかるのね、読むのに。

 

一言で表すと、「後半が付箋だらけになる本」です。

そして、視界が開ける本。

あぁ、つながる、つながる。

今まで経験してきたこと、外向型人間の発言、内向型人間の行動。

「なんでそんな考え方?」「なんでそういう行動?」

自分のハートに引っかかって、点として記録してきた出来事、それらがスッと繋がっていく。

そして、スッキリ腑に落ちる。

 

本というものは、自分がぼんやり気づきかけていることを、はっきりと言葉にして教えてくれるもの。

phaさんのこの言葉、これが蘇ってきたよ。

 

先生、知ることは動揺を鎮めるね!

若林さん、学ぶことの意味はほとんどそれです。

若林さんの本から、この言葉も後追いでビシビシ刺さってきます。

 

話が他の本の名言に逸れてしまいました・・・。

本編に戻ります。

ガンジーさんやその他著名人の実例を交えながら、順を追って論が展開されていく。

あまりにも浸透しきった「社会でやっていくには外向型が!」という脅迫観念。

それを順番にほぐしていく。

治療が病気を作り出す。

そんなハートに刺さる言葉がたくさん出てくる。

内向型でもいいんだ、そう思わせてくれるのに、十分だと思う。

外向型、内向型、それぞれ良さもあるし、足りない部分もある。

 

一番やっちゃいけないのは、世間の「こうあるべき」に負けて、子供に強要しちゃうことだと思う。

小学2年生の女の子が放課後に友達の家で遊ぶのでなく、自宅にいたいと訴えるシーンが印象的だった。

「友達がたくさんいて、友達と遊ぶことがいいこと」ってこれは完全に親の思い込みだよね。

そういう子ももちろんいるし、友達と過ごすのは学校の時間だけで十分って子もいるはずだ。

親が自分の価値観で決めつけて、それを押し付けて、その子が「それが正しい」って思い込んじゃって。

負の連鎖で、結局「自分、何が好きなんだっけ?」ってなっちゃってること、結構あるんじゃないかな。

内向型人間にとっての「回復のための場所」っていうのがすごくしっくりきた。

それは、自分も内向型だからなんだろうな。

その場所とそこで過ごす十分な時間がないと、内向型人間はダメになっちゃう。

そういうことなのかもしれない。

 

今の奥さんへ、すごく響く本だと思います。

とはいえ、本って「これ読んで!」って言われて読むもんじゃない。

「読んでほしい本」と「本人が読みたい本」ってなかなかマッチしないのね。

まあ、気が向いたら読んでみて!