詫び、御礼、ゆかり

10ヶ月前くらいの話。

僕は会社の謝恩会で酒を飲み、前半で意識を失った。

介抱してくれた人達は、ゲロまみれの僕を救急車、病院、自宅まで連れて行ったくれたという。

 

病院で針を刺されチクッとしたこと。

生年月日を聞かれたこと。

タクシーから担ぎ降ろされる時の「せ〜〜のっ!!」という掛け声。

 

残念ながら、このくらいしか本人の脳細胞には残っていない。

 

翌日、視界が白んでいる中、昼から会社へ行き、保健師の方に叱られる。

東京の事業所の方と大阪の事業所の方が、その時たまたまいたのかなんなのか、ゲロまみれの僕を運んだりしてくれたという。

床に手をついて謝りたいところだが、あいにく僕は名古屋勤務。

なかなか出張の機会がないまま、時は流れた・・・。

いや、寄ろうと思えば寄れる機会はあった。

事業所へのピンポイントの出張予定が入るまで挨拶に行かなかったのは・・・行きたくなかった、これに尽きますな。

 

そんなある日、東京事業所へのピンポイントの出張が入った。

菓子折りが一つ、いるのでしょう。

顔も知らない、名前しか知らない相手。

こんな時は「ゆかり」でしょう!

たいそうな缶入り買って行っても、捨てるのに困るでしょう!

プラ袋入りの安いやつ、それで十分なのさ。

 

人に聞いて辿り着いた先、その人は打ち合わせ中のよう。

「アポ取ってないです」「後からまた来ます」と退こうとするが、余計な気を効かせた案内人が会議室のドアを開ける。

詫び、御礼、ゆかり、退散。

「仕事は順調ですか?」

一度辞めて出戻りで会社に戻った経緯の僕に、彼は尋ねる。

「順調かはわからないですけど、まだいます」

支離滅裂な答えしか出ない。

質問の意味が良くわからないのだ。

 

翌日、急遽大阪事業所へ出張の命が下る。

なんか、縁だなぁと思うの。

こっちにも挨拶行ってきなっていう、そんな風を感じる。

 

さあ、初めての大坂事業所。

東京事業所より規模が小さいこともあり、相手はすぐに見つかった。

なにせ10ヶ月くらい前のこと。

詫び、御礼、ゆかりの意味がわからず、キョトンとしていた。

が、そこは関西人。

「生きとって良かったね!!」

3秒後くらいに笑顔が返ってきた。

「そうっすね〜」

後頭部を掻きながら、つられて僕も笑う。

 

どっちの方がいい、悪い、ではないんだけどさ。

僕は「関西」の方が好きだなぁ。