ぶり大根

ぶり大根のこと、ずっと好きだと思っていた。

 

トラブル対応で帰りが遅くなった金曜の夜。

赤いル・クルーゼの蓋を開けると、ブリ大根現る。

一旦、蓋を閉じる。

味噌汁を温め、その他のおかずを食べた後、再びル・クルーゼの前へ。

蓋を開け、躊躇する。

いや、お腹の膨れ具合には余裕がある。

ぶりと大根をふた切れずつよそい、実食。

疑念が確信に変わる。

 

あぁ、自分、ぶり大根苦手だ・・・。

 

30年以上生きてきて、やっと気がついた。

この臭みがダメなんだ。

焼いたブリは間違いなく好き。

刺身、寿司も好き。

・・・いや、生ではバッチリ好きと言えないかもしれない。

焼いた状態が好きだから、ぶり大根も好きだと勘違いしていたのでしょうか?

・・・否、先入観ではなかろうか?

 

普段、僕たちは先入観を「自分の意見」と勘違いしながら生きている。

「国産」だからいいもの、安心。

「うがい、手洗い」した方が風邪ひかない。

「東大」出てるから優秀。

「ぶり大根は美味しいもの」・・・という世間一般論。

ブリ名産の富山県に生まれ、ブリを否定する気持ちが生まれなかった・・・。

故郷を出て10数年。

やっとブリを客観的に見られるようになった、そういうことだろうか?

 

俺、30年以上生きてきて、自分の好きな食べ物すら把握しきれていないんだなぁ・・・。

このペースだと、「無知」のまま死ぬのは疑いの余地がない。

無知に生まれ、無知のうちに死ぬ。

人間一匹、そんなもん。