脚立の女

名古屋→東京の新幹線。

車両の最後尾の列、3列シートの真ん中。

まさにドル箱路線、直前の予約では、しょうがない、しょうがない。

最後尾なので、座席と後ろの壁の間にキャリーバッグを置いて、さあ、座ろうかね、というタイミングで戦慄が走る。

通路側にシットダウンの女性、脚立を持ってる!!!!

カバンではない、脚立である。

あまりの衝撃にオロオロしながらも、なんとか自分の座席に座る。

なぜだ?なぜなんだ!?

私の混乱をよそに、彼女は脚立を席の後ろに置いた。

理由は、わからない。

私が動揺しすぎたのかもしれない。

外観は、真っ黒。

肌の色ではない、服である。

それがワンピースなのか、2ピースなのか、わからないが、肌は日本人、マスクは白。

ボディサイズは文句なしのオーバーL。

マツコデラックスの1/3~1/2くらいではないだろうか。

サテ、彼女は何のために脚立を持っているのか?

これから人気ミュージシャンゆずのコンサートがあり、一段上からゆず観察するために持っていくのかもしれない。

どこかの本屋で、手が届かない高い棚があって、そのために持ってるのかもしれない。

失恋して、よく2人で一緒に乗った思い出の脚立を、田沢湖に捨てに行くのかもしれない。

いくら考えても、理由がわからない。
自らの想像力のなさ、引き出しの少なさに、悲しくなる。

そうこうしているうちに、彼女は寝た。

その音は、イビキとも言えるし、寝息とも言える、絶妙なラインの音だった。

そして、新横浜で下車。

横浜のみなさん、脚立の女性のその後、誰か教えてください!